機械情報工学科プロジェクト:
デジタルツインによる機械製品設計プロセスの教育・研究プロジェクト
このプロジェクトは、2025年度から理工学部において増員となる特定強化枠助教の任用対象「特色ある教育・研究プロジェクト」に採択されました。2025年度カリキュラムで設置される科目「デジタルデザイン&ファブリケーション」(3年生以上、学部共通科目)を対象に、教育効果を高める教育システムの研究を行います。
*2024年度中に助教任用を行います。詳細は学科ホームページの公募情報を参照してください。
新カリ科目「デジタルデザイン&ファブリケーション」
機械情報工学科では「設計工学2・演習」(2年生以上、学科専門科目)において、開発設計プロセスで多く用いられる設計手法・技法を演習付き講義科目として行ってきました。この授業で行っていた設計手法・技法の学習を、仮想モデルおよび実体モデルの作成演習に繋げて学習する科目として2025年度カリキュラムでは「デジタルデザイン&ファブリケーション」(3年生以上、学部共通科目)を設置します。
デジタルデザイン教育の課題
「デジタルデザイン&ファブリケーション」は、3D-CAD, 3D-Printerなどのデジタルツールを用いた演習を含みます。これらのツールを用いた授業は、多くの大学の機械系学科でも行われています。しかし、次のような問題をよく耳にします。
・ソフトウェアの使い方の学習に時間が割かれてしまい、製品を発想・工夫する演習に至らない
・コンピュータシミュレーション結果を鵜呑みにし、原因を探求する演習に至らない
これらの課題を解決する教育システムの開発を目指します。
開発する教育システム
これらの課題を次の方法で解決することを目指します。
・受講者にオリジナルな製品設計をする機会を与え、発想・工夫する演習とする
・「設計」→「試作」→「実験」→「評価」→「(修正)設計」のプロセスを何度も回す機会を与え、原因と結果との関係を理解する演習とする
大人数の受講生であっても、この方法による授業を効果的に運営するために、教育システムの開発を行います。
デジタルツインの利用
開発する教育システムでは、デジタルツインの概念を採用します。デジタルツインは、2002年に米ミシガン大学のマイケル・グリーブスによって広く提唱された概念です。現実世界と対になるふたご(ツイン)をデジタル空間上に構築し、モニタリングやシミュレーションを可能にする仕組みの事を言います。(総務省HPより:https://www.soumu.go.jp/hakusho-kids/use/economy/economy_11.html)
デジタルツインの概念を基礎として、上の図に示す教育システムを考案しました。受講生がオリジナルなアイディアで作成したデジタルモデルや実体モデルの情報をリアルタイム(開発プロセスのループ毎)にデータベース上に構築します。このデータベースは全ての受講生の開発履歴を伴った製品情報や経験的知識の集まりとなり、これをサイバークラスルームと呼ぶことにします。この情報を分析し、受講生にフィードバックを与えて、さらなる工夫を促すことを考えています。例えば、製品の形状の特徴を分類し、各受講生が設計している製品形状がどのような位置づけにあるかといった統計データを提示することなどが考えられます。さらに、毎年蓄積したデータを分析することで、設計における思考プロセスの特徴を導きだすことができるかもしれません。このような広範囲で深みのある研究に繋がる教育システムであると考えています。
(プロジェクト責任者:舘野寿丈)